呼吸困難

病気は多いですが、前向きに生きていきます。目下の課題は重症喘息のコントロールです。

入院5日目〜受動喫煙の弊害

入院は5日目を迎えた。
点滴が漏れたので、ナースコールをして見てもらい、針の刺しかえになった。
「サーチが95%前後と落ち着いてきたので、点滴そろそろどんなもんですかね」
看護師に聞いてみた。


看護師は医師ではないから、そういう質問はなんとも言えないのが定石だが、私はうっかりリハビリの時、仕事は何かと聞かれ、もともと看護師だったことを話してしまった。
なので病棟中に知れ渡ってしまった。
そういう経緯があったので、看護師は説明を始めた。
「ソルメドロールが結構大量に入っての数値だから」「何バイアル?」「2バイアル」「そうですか…」
ソルメドロールとはステロイドだ。1バイアル何mgか種類がある。
それを2バイアル1日2回している。怖くて1バイアル何mgか聞くのを辞めた。


臨床を離れて久しい。
「喘息発作のパルス療法って、どのくらいの量のステロイドいってたっけ」
もう忘れてしまった。


そもそも喘息の重積発作じゃなくて間質性肺炎の急性増悪でもなくて、COPD?
COPDとは「慢性閉塞性肺疾患」のことである。
もしそうなら、在宅酸素になる可能性が高い。
原因の90%は「タバコ」


私は喫煙しないし、したことがない。
対して夫はヘビースモーカー。
最近タバコの量が増えて「先月タバコ代だけで4万いった」と言っていた。
夫のお小遣いは6万円。
東京本社から人が来た時お金が必要だとのことで、まあまあの金額に設定していた。
だから「タバコ代に4万」と聞いた時は、腹が立った。


私たち夫婦は31年間、いろいろあった。
詳細をここで述べるつもりはないが、夫も私も何度も絶望している。
私は夫を甘やかした。
タバコの煙が嫌いなのに、夫の唯一の楽しみだからと新婚時代を除いて、禁煙を勧めなかったし、夫も言うことを聞かなかっただろう。


消灯後、受動喫煙の弊害を調べた。 
受動喫煙でもCOPDになると書いてある。どのサイトにも。


入院2日目に下着の替えを持ってくるように頼んだ。
病棟内がクリアなせいか、下着がめちゃくちゃタバコ臭い。
まだタバコの悪影響云々考える前だ。
「悪いけど、どれもタバコ臭くて着替えられない、外ぼししたのだけ持ってきて」
夫は天気がイマイチだったので、コインランドリーで洗ってきた。
下着は匂わないが、なんだかタバコ臭い。
原因は下着を入れてきた「紙袋」家にあるものを使った。
紙袋はゴミを回収しにきた人に、速やかに持って行ってもらった。


外から帰って家に入ると、ムアっとタバコの匂いが鼻をつんざく。
極めて不快。宅配便の人も臭いと思うんだろうなといつも感じていた。


で、受動喫煙の話に戻る。
吸う本人のタバコはもとより、本人が吐き出す煙にもニコチンとタールが含まれていると厚生労働省のサイトに書いてある。
なんなら衣類やソファー、カーテンに染み付いたタバコの匂いにも毒素が含まれている。
日中ずっと家にいたから鼻が慣れてしまっていた。
それでも外から玄関に入ると、かなり不快なにおいがする。
もう家中がタバコ臭い。
体に良いわけがない。


このご時世、タバコが周囲に及ぼす悪影響を考えての分煙だろう。
今タバコ代がいくらするのか知らないが、医師の回診時聞いてみた。
「呼吸器の疾患でタバコがいいわけありません」
の一言。
私は決意した。「夫にタバコを辞めてもらおう」


考えた挙句、医師の話を盛りに盛って
「今回の発病の原因はタバコが大いに関係している」
と言うことにした。
ちょうど日曜日で、娘と面会に来る。


夫と娘が来て、私は看護師に付き添われて、酸素と点滴を持ちながら、デイルームまでよろよろ歩いてきた。
2人とも私の家にいた時とのあまりの変貌に驚いていた。
席に着くと、看護師に30分と釘を刺された。


「あのさ、今回のそもそもの病気は言われていないけれど。タバコが引き金だろうと」
「…」
「31年間、あんたのタバコの煙に悩まされてきた。どんなに辞めてと言っても辞めてくれなかった。私は唯一のストレス発散法だし、落ち込まれるのが嫌だから、強く禁煙を勧めてこなかった」
「…」
「先生に聞いた。タバコか私の命かの2択だと」
これは医師は言っていない。だがあながち嘘ではない。
少なくとも検索したら、受動喫煙の悪影響が山ほど書いてある。
もしCOPDなら、原因の90%がタバコなんだから、真実となる。


夫は「肺がんになったらやめる」が口癖だった。それが私にきた。
実際財布にまでタバコの匂いがして、不快だ。なんなら怖い。


「タバコを辞めてほしい。禁煙外来に行ってほしい。もう苦しみたくない」
娘がイラつき出した。
「パパのタバコのせいで、ママが死にそうになった」
と涙ぐんだ。


以下、厚生労働省のサイトから引用。


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「受動喫煙」「副流煙」とは
たばこを吸わなくても周囲に喫煙者がいると、火をつけたたばこの先端から立ち上る煙(副流煙)を吸ってしまうことになり、これを「受動喫煙」といいます。吸わない人も、自分の意志とは関係なく喫煙している状態なのです。


たばこの煙には、喫煙者が直接吸い込む煙=「主流煙」と、火のついた先端部分から立ち上る煙=「副流煙」があります。
フィルターを通らない「副流煙」には喫煙者本人が吸う「主流煙」より高濃度の有害物質が含まれています。


受動喫煙による健康への影響により、年間1万5千人が死亡


有害物質 主流煙 副流煙
タール (ヤニ、発がん促進物質) 1 1.2~10.1倍
ニコチン (ゴキブリの殺虫剤の成分) 1 2.8~19.6倍
一酸化炭素(酸素の運搬機能を妨げる) 1 3.4~21.4倍
アンモニア(目を刺激する) 1 294.2~2,565.5倍


たばこの煙は全身に影響 
喫煙をしたり受動喫煙にさらされていると、肺がん、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、乳がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの病気を発症する危険性が高まります。
また、加熱式たばこも健康に害をおよぼす物質(有害物質等)が含まれており、紙巻きたばこより安全とは言えません。
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iPadでこのサイトを2人に見せた。
喘息の時点で、受動喫煙はアウト。しかもタバコの火を消したらすぐに次のタバコに火をつける。
31年間、タバコの煙に我慢してきた。
この状態まできて、もう看過できない。タバコの匂いに恐怖心すら抱く。
COPDだった場合、原因の90%がタバコなら、夫のタバコで病気になったことは確定する。
だから嘘ではない。


「わかった」
夫はやっと禁煙を決心してくれた。
タバコは依存症だ。夫は40年間吸い続けてきた。
離脱症状は麻薬並みと聞く。
簡単に禁煙できないことは覚悟した。
それでも人から言われて嫌々禁煙するのではない。自分で決心した。
まして私の命がかかっている。


私は結婚して10年経ったくらいから喘息を発症した。
親、祖父母とも喘息持ちの家系ではないから遺伝は考えにくい。
それでもなお、夫に禁煙はせまらなかった。
だが今回は話が違う。
仮に喘息の重積発作だとしたら、致死率は38%なのだ。
今までタバコを許してきたのは、私も夫に依存しているところがあったから。
お互いを甘やかし続けた結果なのだ。私も悪い。
夫にしてみれば
「世の中にタバコを吸う人はたくさんいるのに」
と言う思いもあるかもしれないし、おそらく自分が肺がんになっても辞めない。
タバコ代が4万円。我が家は金欠状態なので、家計は火の車だ。
それでもお小遣いを6万円渡していたのは仕事のためだ。
それを悪びれもせず
「今4万円分タバコ吸っている」
と言った。経済的なことを考えたら、憤懣やる方ない。


次に夫のお小遣いについても話し合った。
今まで6万円のうち4万円がタバコ代なら、2万円で良い計算になる。
だが話を聞くと「昼飯抜かしてタバコ代にあてていた」とも言う。
それじゃ体を壊す。
尚且つ「禁煙」というストレスを考えたら、依存症の矛先は買い物に向く。
夫は身なりをブランドで固めているわけではないが、買い物が大好き。
私はネット通販だが、夫はコンビニでタバコを買うついでに私の好きそうなデザートなども買う。
私が喜ぶと嬉しいと言う。
自分のものを買わなくても「買い物をした」という事実だけで、心が満たされている様子。
「私もいちいちあんたに確認しないで買い物できるお小遣いが欲しい」
とこの際言ってみた。
ということで、夫月4万円、私月2万円、お小遣いを設定した。


30分が経ち、看護師に声をかけられた。
粗々で話がまとまった。
お小遣いなどもらわなくても、私が「ほしいものがある」と言って、夫が反対したことはない。
それでもお伺いをたてずに自由になる2万円のお小遣いは嬉しい。


あとは部屋や衣類、カーテン、ソファーに染み付いたタバコの匂い。
放っておけば、徐々に匂いは消えるが、退院したら家に帰るのが怖い。


とにかく一歩踏み出した。大きな一歩だ。
気持ちが幾分楽になった。

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